友人に会いにふらりと行った高知県。
高知について私が知っているすべては、かつおのたたきと坂本龍馬。
ぼんやりしたイメージで降り立った町には、商店街を抜けたすぐそこに、お城がありました。
高知城。
いっちょ行ってみるか、と、なぜ私は思ってしまったのでしょうか。
城には、とりたてて興味がないのに。
歴史など、なにひとつ知らないのに。
気温が、38度だというのに。
ひとりで、城に。
遠くから眺めるかぎりは、ちょっと小高いところにある、こぶりな城でした。
門をくぐり、城をめざして坂道をのぼります。
あれ、おかしい、このへんに城がありそうなのに。
歩めども歩めども、城はいっこうに見えません。
私から城が逃げているかのよう。
汗だくになって、ようやくたどりついた城の玄関口。
城の全景を仰ぎ見ます。
おお、これが、高知城。
しかしその城に誰がいたのか、何が起こったのか、ここで歴史が動いたのかそうでないのか、まるでわからない私は、おお、城だ、と思う以外に、何も感じることができません。
なのに。
城に入ってみるか、と、なぜ私は思ってしまったのでしょうか。
毒を食らわば皿まで。
ここまで来たのだ、めざそうじゃないか、天守閣。
なぜのぼるのかって?
それはそこに天守閣があるからさ!
気温のせいでおかしくなっていたのでしょう。
私は階段をあがりました。
城ですから、冷房なぞありません。
もちろんエスカレーターやエレベーターもありません。
人もまばらです。
38度。
こんななか山をのぼって城を見にくるなんて、よほどの歴史好きか、阿呆でしょう。
吹き出る汗をおさえながら、階段を一段一段ふみしめていきます。
ついにたどりつた天守閣は、さわやかな風がそよいでいました。
高知の町を一望しながら、ひと息つきます。
この景色をながめながら、なにがしというお殿様が、なにかしらの制度を考えたり、よその藩から攻められやしないかと心配したり、年貢を増やす策を練ったりしていたのでしょうね、たぶん。
貧乏性の私は、せっかくだからと観光名所だという桂浜にもいきました。
立派な銅像があるところから察するに、坂本龍馬がここにきて、海をながめながら、なんとかぜよ、と言ったりしたのでしょうね、たぶん。
美しい浜でした。
歴史ある観光地は事前に学習しておく。
酷暑日に城にのぼるものではない。
こぶりに見えても城はでかい。
高知の旅は、私にいろいろなことを教えてくれました。
ありがとう、高知県。
- - | - | - | - |