絵は、かわむらふゆみさんが描いてくださいました。
やさい専門のとこやさんには、セットしてほしいというのがきたり、
ヒゲをそろえてほしいというのがきたり、
エステをしたいというのがきたりします。
おめかしして、みんなどこへいくのでしょうねぇ。
みかけたら、読んでみてくださいね。
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やったー!
『おにのしょうがっこう』です。
小学校低学年むけ。あかね書房さんより出版されました。
文章は、わたくし山田マチ。
絵は、岡本よしろうさん。
岡本さんとご一緒するのは、鹿の歯科のおはなし『しかしか』につづき2作目となります。
かわいい鬼のこどもたちや、鬼たちがはたらく地獄を、おもしろおそろしく描いてくださいました。やったー!
ふたごの鬼、赤鬼のベニーと青鬼のルリーが、小学校に入学します。
地獄に落ちてくる人間の名前を間違えるといけませんので、国語を勉強します。
地獄に落ちてくる人間の人数や、お仕置きの時間を間違えてはいけませんので、算数を勉強します。
地獄の地図を覚えたり、カミナリ様になるために太鼓の練習もします。
でも何よりも大事なものは「金棒」。時間割は、国語、金棒、算数、金棒。
人間が町を襲ってきて通学できないときは、自宅でオニライン授業をうけます。
人間の小学校と似ているようで、ちょっとちがう鬼の小学校のおはなしです。
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2022年ですって。未来みたいな数字ですね。
2222年の未来はどうなっているんでしょう。
商店街はまだあるのかな。
パン屋さんはまだあるのかな。
チョココロネはまだあるのかな。
大好きなチョココロネのおはなしを書いたのです。
「ころころコロネ」
フレーベル館の月刊保育絵本キンダーブック
キンダーメルヘンの1月号。
絵は、海谷泰水さんが描いてくださいました。
焼き上がり、もうチョコクリームを入れるばかりの体になったコロネが、
「ほんとうにこのままチョコを入れていいのだろうか……
ほかに入れるべきものがあるんじゃなかろうか……
自分はいったい何コロネなのだろうか……」
と苦悩し、たまらくなくなってパン屋を飛び出し、自分にいれるべきものを自分で探し出す。
あれ、なんか重い書き出しになってしまいましたね。失礼しました。
コロネがころころと転がりながら、アイスクリームになったり、ヤドカリのおうちになったり、オニのツノのすぽっとはまったりしてゆく、愉快なおはなしです。
穴あきや香りなどの仕掛けもありますよ。
こちらで単品でのご購入もできますので、よろしければ。
裏表紙には、いろいろなコロネの食べ方をするこどもたち。
あなたはどうやってコロネを食べていますか?
さきっぽから? おしりから? それとも……
あなたが当たり前だと思っていることは、当たり前ではないのかもしれませんよ。
では、ごきげんよう。
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児童書『 山田県立山田小学校 』の8巻目が出版されましたー!
タイトルは「新発見!? 山田文明のなぞ」。
ピンクのにぎやかな表紙です。
今回も「山田」だらけ!
7巻からしばらく時が止まっていたこのシリーズ。
ステイホームのおかげで書くことができました。
わるいことばかりじゃないですね。
あかね書房さんから出ている、
絵本「のんびりやのサンタクロース」は、この時期からお正月まで有効です。
クリスマスにプレゼントが間に合わなかったら、言い訳につかってくださいね。
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こんにちは。
きょう4月18日は、「よい歯の日」。
歯にまつわる絵本が、小学館より刊行されました。
「しかしか」
絵は、岡本よしろうさんが描いてくださいました。
鹿 の 歯科。
そうですよ。だじゃれですよ。
鹿の営む歯科には、動物たちがつぎつぎ治療にやってきます。
どんなに困った患者がきても、
「しかたない、わたしが治すしかあるまい」
と、しかるべき治療をしっかりする鹿先生。
歯がぬけそうな小学1年生の男の子が、先生のお手伝いをしながら、動物の歯のことや、歯の大切さを学んでいきます。
そうですよ。こうみえて、けっこう役立つ内容なんですよ。
読んでみてくださいね。
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3月に「どこどこ こけし」という絵本を出版したところですが、こんどは「だるま」の本ができましたよ。
野生のいきもの…? に出会ったときの対処法を記した絵本…? です。
だるまのほかにも、こけし、まねきねこ、こいのぼり、なまはげ、ししまい、などの、つかまえかたや、飼いかた、食べ方などをご紹介しています。
絵は、福島モンタさん。
ほのぼのしてるけどときどきこわい、絶妙なバランスのイラストを、赤青鉛筆1本で描き上げてくれました。
だるまもこけしも、あわせてよろしくおねがいします。
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こんにちは。山田マチです。
こぐま社より、あたらしい絵本が発売されました。
です。
なりすましにご用心!
こけしは茶箪笥のうえから知らないうちに旅に出て、はてさて、どこにいっているのでしょうか。
絵は、花山かずみさんが描いてくださいました。
ページのあちこちに、楽しい遊びがたくさんかくれていて、何度めくっても新しい発見があります。
こけしや、こけし以外のキャラも、探して遊んでくださいね。
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こんにちは。
12月になりました。
「8月すぎたら大晦日」という名言がありますが、ほんとですね。
おとといくらいまで災害級の暑さがどうのと騒いでいたような。
キンダーブック「がくしゅうあおぞら」で年越しをテーマにお話を書きました。
なんと幸せな表紙でしょうか。
おおそうじをすると、年神様が幸せを運んでくれるんですって。
台所など水まわりがきれいだと、なお良し。
勉強になりました。
お近くにいる年長さんのおともだちが、読んでくれているかも。
おとなのおともだちも、読んでみてくださいね。
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こんにちは。
今日11月5日は「いいりんごの日」なんですって。
月間絵本「なかよしメイト」に、りんごのお話を書かせていただきました。
りんごの皮のすべりだいをすべって、りんごだらけの「りんごランド」にいってしまうという、りんごまみれのお話です。
全国の保育園や幼稚園のこどもたちが読んでくれていると思います。
どこかでこの表紙を見かけたら、おとなのみなさんも読んでみてくださいね。
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6/30(土)から7/8(日)まで、
紀伊國屋書店・西武渋谷店にて開催される
『 ジジの合鍵 〜 雑貨屋ジジとアーティストの10年 〜 』出版記念イベントに参加します。
「ジジ」とは、アートやら雑貨やら写真やら音楽やら犬やら長野やら。
いろんなことを全部ひっくるめて活動する、小山奈々子さんと野口幸子さんのユニット。
渋谷区代官山で雑貨屋を営んでいたころには、
「山田町88丁目のみなさんへ」という架空の掲示板を展示させてもらったり、
「山田百字文学展」をひらいたりと、とってもお世話になりました。
このたび、おふたりの活動を記した本が出版されたのを記念して、
いまや幻となった「雑貨屋gg」が限定オープン!
私は、白いトランクのなかに、山田百字文学や、山田町回覧板や、山田マチの山田マッチなどをぎゅうぎゅうに詰め込んで、ドンっと置いてきました。
まだ準備中の会場におじゃましたのですが、そこはもうggそのもの。
ふたりそのもの。
知っている人は懐かしく、知らない人には、なんだこれはと新鮮な、かわいくもふしぎな空間になっていると思います。
ぜひお出かけになってくださいね。
場所や時間や参加アーティストなどの詳細は、*こちら* をごらんください。
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こんにちは。山田マチです。
小学館の「小学一年生」2018年6月号に、おはなしを書きました。
ドラえもんの表紙をめくると、こんなふうに、、、
ふくろとじのミニ絵本が入っています。
歯にまつわるおはなしで、タイトルは「しかしか」。
鹿の歯医者さんのところに、いろんな動物が治療にやってきます。
「鹿歯科」。
だじゃれですよ。そうですよ。
絵は、岡本よしろうさん。
頼りになる鹿の先生や、困っている動物たちを、とてもかわいらしく描いてくださいました。
付録は、ドラえもんの「くっきり虫めがね」と「さかさまスコープ」。
豪華!
「小学一年生」すごいことになっています。
小学一年生のおともだち、
小学一年生のおともだちのいるおともだち、
小学一年生じゃないおともだちも、
よかったら読んでみてくださいね。
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またまた絵本ができました。
「てのりにんじゃ」(ひさかたチャイルド)
ちっちゃい忍者が家にやってきたらどうすればいいか。
これを読めばくわしくわかります。
絵は、北村裕香さん。
ちっちゃいけれどかっこいい忍者を描いてくださいました。
帯のコメントは、小林賢太郎さんにいただきました。
「世界初なんじゃないですか? 手のひらサイズのは」
たしかに。
裏表紙にも、もうすこし長いコメントが載っていますので、本屋さんでお手にとってみてくださいね。
「てのりにんじゃ」、どうぞ末長く、よろしくお願いいたします。
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こんにちは。
幻冬舎の文芸誌「ジンジャーエール」と、
webマガジン「幻冬舎plus」で連載していた、
山田マチの『ひとり暮しの手帖』が、
電子書籍となって発売されています。
ひとり暮しのあれやこれやをつらつらと書き綴りました。
幻冬舎plusのサイトでは、「よりぬきひとり暮しの手帖」もちょこちょこと公開されています。
購入のページでは、試し読みもできるみたいなので、
お気に召していただけましたら、ポチッとやってくださいね。
2017年も、どうぞよろしくお願いします。
山田マチ
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「山田百字文学 × 百枚絵」展は、無事に終了しました。
ご来場くださいました皆さま、誠にありがとうございました。
今日は、おくればせながらのお知らせがございます。
11月1日より、
の連載がはじまりました。
文芸誌「GINGER.L」で連載していたものが、webにお引越し。
これまで書いたものや、新しく書くもの、織り交ぜながら、
1日と15日の月に2回、更新していきます。
紹介文には、こう書きました。
***
これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。
ここには、山田マチのひとり暮しのいろいろを書きつけます。
このなかのどれかひとつくらいは、
あなたの心に届くかもしれない。
届かないかもしれない。
これは、ひとり暮しの山田の手帖です。
***
どこの馬の骨かもわからぬ山田という名の女のひとり暮しのあれやこれや。
スマホでもパソコンでも。
仕事の合間や移動中。
ふっとあいた時間、ひまつぶしに読んでみてくださいね。
]]>•
とき:2015年11月10日(火)〜 2015年11月15日(日)
12:00〜19:00 (最終日17:00まで)
東京都港区北青山2-12-20 山西ビル#101
tel & fax 03-3746-4670
絵:
天野彩乃
小山萌江
坂口友佳子
佐藤豊彦
進士 遙
スイート京子
林 宏之
MARI MARI MARCH
ミナ・ヌクッタ
山本恵未
文:
山田マチ
私の作品に、
オリジナルの百字の原稿用紙をつくり、
最後のマスに「 。」がくるよう100字ぴったりで物語を書く
「山田百字文学」
というのがあります。
その「山田百字文学」に、10人の絵描きさんが合計100枚の絵を描いてくださる展覧会が開催されます。
•
とき:2015年11月10日(火)〜 2015年11月15日(日)
12:00〜19:00 (最終日17:00まで)
東京都港区北青山2-12-20 山西ビル#101
tel & fax 03-3746-4670
絵:
天野彩乃
小山萌江
坂口友佳子
佐藤豊彦
進士 遙
スイート京子
林 宏之
MARI MARI MARCH
ミナ・ヌクッタ
山本恵未
文:
山田マチ
ギャラリーダズルは、外苑前駅の3番出口を出て、BMWのビルの脇を入って、右に曲がった、つきあたりのところにあります。
のんびりと時間が流れる居心地のいい空間。
ぜひおでかけくださいね。
]]>『ひとり暮らしの手帖』
これは、ひとり暮らしの、山田の手帖です。
* * *
ぽっかりあいてしまった休日。
お友達を誘って遊びにいったり、ウインドーショッピングにでかけたりもけっこうですが、たまには一日中、部屋のなかでだらっとしてみてはいかがでしょう。
その際は、「誰かからお誘いの電話がこないかしら」などという淡い期待を持ちながら、なんとなくだらっとしてしまうよりも、「よし、だらっとしよう」「誘われてもけっして家を出ないぞ」と腹をくくってからだらっとする方が、はるかに快適に、だらっとできます。
まず、ラクな服と下着を着ます。
しめつける部分はどこもない、ゆるみきったゴムのものを選びましょう。
化粧はもちろんしません。
顔を洗ったら、化粧水もつけません。
これは、どこにもでかけない日にだけできる、私なりの美肌術。
自分の力で内側から潤わせるのです。
スパルタです。
部屋の室温湿度を、ちょうどよくします。
エアコンをつける場合は、リモコンを必ず手元に置くようにします。
暑かったり寒かったりしては、快適にだらっとできません。
飲み物を用意します。
夏でしたら、たっぷり氷を入れた大きなグラスで。
冬でしたら、ティーポットになみなみと。
そして、お菓子。
甘いもの、辛いもの、しょっぱいもの、柔らかいもの、かたいもの。
方向性の違うお菓子が何種類かある方が、だらだらと食べ続けていられます。
果物をはさむのも効果的です。
手が汚れるお菓子の場合は、わざわざ手を洗いにいかなくてもよいよう、お手ふきかティッシュを用意しておきましょう。
本は、雑誌やハードカバーや文庫など、さまざまなタイプがあるとよいでしょう。寝ころんで仰向けのときは文庫、うつぶせの時は雑誌、など、姿勢に合わせた読み方ができます。
カーテンを閉めて、電気をつけます。
だらっとしている途中で暗くなって電気をつけにいくのもめんどうですし、手元で電気がつけられたとしても、カーテンがあいていると、部屋のなかが丸見えになってしまいます。
はじめから閉めておくのがいいのです。
テレビ、DVD、CDなどのリモコンが、すべて手元にある状態にしておきます。
みる、きく、のためだけでなく、新聞の勧誘や受信料の徴収などがきたら、さっと音を消して、いないふりをするためでもあります。
もちろん、電話は近くに置いておきます。
これで、数時間は、こたつなりソファなりの定位置から、いっさい動くことなく、完璧にだらっとできることでしょう。
親にも夫にも子供にもじゃまされることのない、自分だけの時間。
ひとり暮しで本当によかった、と心底思える、数少ないひとときです。
]]>これは、わたしの手帖です。
ひとり暮らしのいろいろのことが、ここには書きつけてある。
この中のどれか一つ二つ、あなたの暮らしに役立つといいのに。
これは、ひとり暮らしの、山田の手帖です。
***
ソースやケチャップは、お弁当用に売られている、小分けのものを買っています。
ボトルをあけたところで、今度いつ使うかなんて、わかりません。
年の瀬と賞味期限は、またたくまにやってきます。
百円均一の調味料も、小さくて、便利です。
***
スーパーでお惣菜のコロッケを買うとき、ペラペラの透明パックにひとつのコロッケを入れるのはうしろめたく、なんとなく2個、買ってしまいます。
ひとつはその晩にソースをかけて食べ、もうひとつは翌日、めんつゆで煮て卵でとじ、コロッケ丼としていただきます。
***
卵の賞味期限は、気にしません。
割って、黄身がくずれていなければ、よしとします。
***
あたりまえのことですが、ひととおりの防災用品や非常食は、用意しています。
自分の身は自分で守る。
近所の人の顔さえ知らず、町内会の活動にも参加しておりませんのに、非常時だからといって甘えるのは、申し訳なく思うのです。
避難所にいくことになったとしても、まっとうな生活をおくる町内のみなさんにできるだけ迷惑のかからぬよう、万全の対策を。
***
テレビやDVDプレイヤーなどの接続、パソコンの設定などは、最初がかんじんです。
たとえわけがわからなくても、途中で投げ出したくなっても、歯を食いしばって、自分でやります。
なぜなら、トラブルが起こったとき、自分で何とかしなくてはならないからです。
助けてくれる人はおりません。
最初にしくみを把握しておくと、泣きながらでも、なんとか対処できるものです。
***
夜更けのそうじは、「コロコロ」で。
髪の毛やチリなど、けっこうな大きさのものも接着してくれます。
小さなムシも、化石のように、へばりつきます。
***
孤独死、という言葉を聞くと、どきっとします。
少子化、という言葉を聞くと、すんません、と思います。
友人に会いにふらりと行った高知県。
高知について私が知っているすべては、かつおのたたきと坂本龍馬。
ぼんやりしたイメージで降り立った町には、商店街を抜けたすぐそこに、お城がありました。
高知城。
いっちょ行ってみるか、と、なぜ私は思ってしまったのでしょうか。
城には、とりたてて興味がないのに。
歴史など、なにひとつ知らないのに。
気温が、38度だというのに。
ひとりで、城に。
遠くから眺めるかぎりは、ちょっと小高いところにある、こぶりな城でした。
門をくぐり、城をめざして坂道をのぼります。
あれ、おかしい、このへんに城がありそうなのに。
歩めども歩めども、城はいっこうに見えません。
私から城が逃げているかのよう。
汗だくになって、ようやくたどりついた城の玄関口。
城の全景を仰ぎ見ます。
おお、これが、高知城。
しかしその城に誰がいたのか、何が起こったのか、ここで歴史が動いたのかそうでないのか、まるでわからない私は、おお、城だ、と思う以外に、何も感じることができません。
なのに。
城に入ってみるか、と、なぜ私は思ってしまったのでしょうか。
毒を食らわば皿まで。
ここまで来たのだ、めざそうじゃないか、天守閣。
なぜのぼるのかって?
それはそこに天守閣があるからさ!
気温のせいでおかしくなっていたのでしょう。
私は階段をあがりました。
城ですから、冷房なぞありません。
もちろんエスカレーターやエレベーターもありません。
人もまばらです。
38度。
こんななか山をのぼって城を見にくるなんて、よほどの歴史好きか、阿呆でしょう。
吹き出る汗をおさえながら、階段を一段一段ふみしめていきます。
ついにたどりつた天守閣は、さわやかな風がそよいでいました。
高知の町を一望しながら、ひと息つきます。
この景色をながめながら、なにがしというお殿様が、なにかしらの制度を考えたり、よその藩から攻められやしないかと心配したり、年貢を増やす策を練ったりしていたのでしょうね、たぶん。
貧乏性の私は、せっかくだからと観光名所だという桂浜にもいきました。
立派な銅像があるところから察するに、坂本龍馬がここにきて、海をながめながら、なんとかぜよ、と言ったりしたのでしょうね、たぶん。
美しい浜でした。
歴史ある観光地は事前に学習しておく。
酷暑日に城にのぼるものではない。
こぶりに見えても城はでかい。
高知の旅は、私にいろいろなことを教えてくれました。
ありがとう、高知県。
]]>友人が高知県に引っ越したので、会いにいきました。
高知にいくのだと人に言うと、すかさず、
「かつお!」
とかえってきます。
次が、「龍馬!」
かつおと龍馬のイメージだけを頼りに、初めての高知ひとり旅。
新幹線で岡山まで行き、高知にむかう特急電車のホームにおりると、
私を待っていたのは、アンパンマンでした。
無数のパンに支配されるカラフルなアンパンマン列車。
食材そのまんまのキャラも。左のは、大根役者くん?
車内アナウンスは戸田恵子さん…じゃなくてアンパンマン。
高知県は、やなせたかしさんのふるさとで、
アンパンマンミュージアムというのもあるそうです。
愛と勇気だけを道連れに、
瀬戸内海の島々をながめながら、高知駅着。
私はまず、商店街に行き、パン屋さんをさがしました。
お目当ては、「ぼうしパン」。
高知県のことを調べたら、やたらと出てくる「ぼうしパン」が気になってしょうがなく、まずはこの目でたしかめたいと、一目散。
ありました、ぼうしパン。
まさにぼうし!
つばの部分は、メロンパンをかたくしてサクサクさせたようなもの。
頭の部分は、クリームなどの中身はない、甘いパン。
ふたつの食感があるので、食べてて楽しい。
これ、職人さんが失敗しちゃって、苦肉の策で「ぼうしパン」と名前をつけて売ってみたら、それがうっかり人気になっちゃったっぽいな、と思ってちょっと調べてみたら、正解でした。
高知では、いろんなパン屋さんや製造メーカーが「ぼうしパン」という商品を売っていて、「つばだけ」なんてのもあるみたいです。
もちろんいますとも「ぼうしパンくん」。
やなせたかしさん、描かない、描いてもらわないわけにはいかないですよね。
東京では、まんまるの甘いパンが「UFO」という名前で売っていました。
「ぼうしパン」のほうがよほど「UFO」のような。
となると、バイキンマンの乗り物は……。
高知の旅は、
かつおでも龍馬でもなく、
パンとやなせたかしではじまったのでした。
(おまけ)
トトロパンも買いました。
つぶら!
]]>東京はずいぶんと暑い日が続いています。
35度と聞いてもびっくりしなくなりました。
高温や大雨や竜巻などの注意報警報がひっきりなしで、
NHKの画面は、ひとまわり小さいのが当たり前になってきましたね。
みなさま、元気におすごしですか?
湿気にめっぽう弱いので、エアコンが欠かせない私なのですが、
冷房に弱く、すぐに体が冷えてしまいます。
冷え性のみなさま、冷房、どうされてますか?
28度、風量しずか、で設定しても、次第にさむくなってくる。
切るとあついので、今度はドライにしてみる。
さむい。
ドライで、温度「+1」にしてみる。
ちょっとあつくなってくる。
リモコンに「健康冷房」とあるので、押してみる。
さむい。
なにをもって健康なのか、よくわからない。
冷房の28度にもどし、「風ないス」というボタンを押してみる。
「風がないっす」と後輩風をふかせているのか、
「ナイスな風」がふいているのか、よくわからない。
さむい。切る。あつい。
1日中こんなことをピコピコと繰り返しています。
正解、まだ出ず。
これを書いている今は、新幹線に乗っています。
乗り物ってのも、難しいですよね。
家から出るときは、Tシャツに短パンにサンダルでした。
今の姿は、首に小さいタオル地のストールを巻き、
うでにはアームカバーをはめ、
ひざには大きなストールをかけ、
足にはレッグウォーマー。
レッグウォーマーは二重になっていて伸ばせるので、
もしもの時は足先から太ももまですっぽり。
カバンには、くつしたやカーディガンも入っています。
移動は、仕事や読書をする大切な時間ですから、
冷房の具合によって微妙な調整ができるよう、万全の態勢。
私の旅のカバンが大きいのは、防寒グッズのせいなのです。
冷える私が悪いのか。
燃焼しない脂肪が悪いのか。
新幹線にいるのはあと1時間半。
冷房との攻防はつづきます。
前回のブログでは、
北九州市の小倉で、昭和に、それも戦後の闇市にタイムスリップしたお話をしました。
そのすぐあとに行った名古屋でも、私は時空のゆがみを体験することになります。
友人が引っ越したというので、出かけた先は、円頓寺(えんどうじ)。
名古屋駅から20分も歩けば着いてしまう都会のど真ん中にありながら、
そこには昭和そのまんまの、懐かしい商店街がありました。
こんなかんじ。
お茶やさん。現役です。
ウチヤ。何屋?
銀座あります。
見せたかったのは、金シャチじゃなくて、うしろの看板。
すごいのは、チェーン店がないところ。
全国の商店街を同じような景色にさせている、ファーストフード、コーヒーショップ、携帯ショップ、牛丼を食べさせる店、くつしたを売る店、などがこの通りには見当たりません。
友人宅は、商店街から一本入ったところにある一軒家。
誰も住まなくなってボロボロになっていた家を、仲間たちで荷物を片付け、床を敷いて、壁を塗って、暮らしはじめました。
そこに商店街のみなさんが、お酒やごちそうをもって続々とやってきました。
予期せぬ大パーティー。
みなさんの目下の関心ごとは、アーケードに吊るす飾りものについて。
毎年七夕のお祭りに、お店の人や町の有志が、それぞれに巨大なハリボテをつくって出来映えを競うのが恒例となっているようで。
「今年はなにつくる?」
「ダウオウイカしかないだろう!」
「どのくらいの大きさで?」
「小さくつくったら、ただのイカじゃないか」
「等身大しかあるまい」
「20メートル!?」
「過去最大の作品になるぞ!」
楽しそうだな。
10月には「円頓寺秋のパリ祭」というのがあって、円頓寺商店街にパリの魔法がかかるそうです。
秋か冬には、“ おむすび通貨 ” で買い物できる「こども夢の商店街」が開催されるそうです。
ますますもって楽しそうだな。
とりあえずは、7月31日〜8月4日までひらかれる「円頓寺七夕まつり」に行き、ダイオウイカのその後を見届けてこようと思います。
半年ぶりに、実家に帰りました。
母や妹と台所で茶をのみ、しばし近況報告などをしたところで、妹がふわりと話を切り出しました。
「あ、そういえば知ってる?」
山田家のこのセリフはご用心。
以前、これにつづいた言葉は、
「昨日ね、前に住んでた家が全焼したんだよ」
でした。
今回も今回で。
「こないだ父さんがね、頭をケガして救急車で運ばれたんだよ」
なにそのビッグニュース。
ある日、家の前の畑から「おおい。おおーい」と叫ぶ父の声が聞こえたそうです。
行ってみると、あたり一帯血まみれで、父は頭をおさえています。
どうやらビニールハウスの修繕中に、鉄パイプが刺さったらしい。
救急箱を持っていくと、
「ちがうちがう。救急車だ!」
本人の希望どおりに救急車がやってきて、隊員が処置をほどこそうとします。
それまでずっと頭の一部分を押さえ続けていた父。
隊員の指示をうけてその手を離すと、血が、
「ピューーーッ!」
と吹き出たそうです。
その「ピューーーッ!」になると、なぜかふたりは大爆笑。
おでこの上あたりから大きく弧をえがくふりつきで、ピューーーッ。
へえ、とうなずく私に、さらにつづけます。
「ほんとに、すごい勢いで血が吹き出したんだよ。ピューーーッって!」
妹も母も、涙を流さんばかりに笑いころげている。
その日の夜、もうひとりの妹と話をした時も。
「あ、ねえちゃん聞いた?父さんのケガのこと」
「うん。頭から血がピューーーッて吹き出たんでしょ」
「あはははは、そうそう。ピューーーッ!あはははは!ピューーーッ!」
同じふりつきで、こちらも爆笑。
父の額から血が吹き出る様は、どうやら相当に愉快だったようです。
彼女のスマホには、高級果物のごとく頭にネットをかぶせられ、おどける父の写真がありました。
畑仕事に精を出す父に聞きました。
「頭をケガしたんだって?」
「おお。しごひゃくってとこだな」
「しごひゃく?」
「400から500くらいは血が出たんじゃねえか」
なぜケガの度合いをミリリットルで示すのだ、父よ。
結局何針縫ったかは知りませんが、病院で処置をしたらすぐに家に帰り、トウモロコシの消毒にとりかかったそうです。
そのトウモロコシがこちら。
「トウモロコシは、もいだらすぐに茹で、食べる」
が、山田家の鉄則。
実家滞在中は、ひたすらにトウモロコシを茹で、食べ続けました。
そういえば、のニュースがもうひとつ。
家族に、猫が1匹加わっていました。
名前は「ニャー」だそうです。
猫は、ぜんぶ、そうなくよ。
まあいいか。
日本の48番目の県「山田県」にある「山田小学校」でまきおこる物語。
山田県庁があって、山田商店街があって、山田動物園があって。
山田城ではおとのさまがくらし、
山田川にはカッパのおじさんが泳いでいる。
山田県は、そんなところです。
挿絵、というより、ほぼメインといっても過言ではないイラストは、
杉山実さんが描いてくださいました。
くだらない話を、よりくだらなくしてくださって、大変感謝しております。
杉山実さんのホームページ「ミノルランド」はみどろこたっぷり。
毎日更新してらっしゃるブログ「4コマ戦士 パパ戦記」は、
かわいらしくてほのぼの。
『山田県立山田小学校』、
感動や教訓はいっさいありませんが、
こどもたちに「鼻で笑う」という体験をしてもらいたい。
あかね書房より発売です。
ぜひ、そこいらのお子さんといっしょにお読みくださいね。
こんにちは。
前回の8のつく日は、ブログをおやすみしてしまいました。
のぞきにきてくださった方、ごめんなさい。
てんやわんやでした。
あれ?書こうとしていた言葉とちょっとちがう。
あ、そうそう。
てんてこまいでした。
同じことでした。失礼しました。
山田がてんてこに舞っていた一因を、
今日はようやくお知らせすることができます。
あたらしく本が出ることになりました。
児童書です。
対象は、小学校中学年。3〜4年生ですね。
タイトルは、
『山田県立山田小学校』
といいます。
日本48番目の県「山田県」にある「山田小学校」で巻きおこる物語。
なんと、2巻同時リリースです。
『山田県立山田小学校 〜 ポンチでピンチ!? 山田島 〜 』
『山田県立山田小学校 〜 山田伝記で大騒動!? 〜』
あかね書房さんより、6月下旬に発売予定です。
お子さんや甥っこ姪っこに読ませてあげてください。
学校や児童館やお医者さんの待合室の本棚にもぜひ。
教訓や感動は、まったくありません。
いつもどおりに書きました。
こどもたちは、鼻で笑ってくれるでしょうか。
どきどきです。
「山田です。」
とだけ自己紹介して作品を発表していたころのこと。
わたしのお話を読んでくださったという初対面の方に、
あいさつもそこそこに言われました。
「山田さん、愛知県出身ですか?」
「そ、そうですけど・・・なぜ?」
「お話のなかに “ トキントキン ” って言葉が出てきたので」
わたしはそこではじめて「トキントキン」が方言だという衝撃の事実を知ったのです。
トキントキンとは、鋭くとがった様子をあらわす言葉。
最上級は、トッキントッキン。
お話のなかでは、ホステスに生えているツノがトキントキン、だと表現されています。
知らずに本にまでしちゃいましたよ。
トキントキン…鉛筆の先がトキントキン…愛知県しか伝わらないんですね。
でも、トキントキンは、トキントキン。
トキントキンにかわる言葉なぞ、見つかりません。
先日、ふらりデパートを歩いていると、ぐっとくるワンピースに出会いました。
求め探し続けている「魔女の宅急便」のキキみたいな、ずぼっとかぶるだけの、柄も飾りもかわいげも何もない、ただのワンピース。
「ワンピースをおさがしですか?」
30歳くらいの男性の店員さんが声をかけてきました。
そうなんですよ。これは素材はなんですか?洗濯機で洗えますか?しわになりませんか?旅が多いものでねぇ。などと質問をぶつけていると、店員さんが得意げに言いました。
「旅先で洋服のしわを取る方法、知ってます? ホテルのお風呂場に吊るしてね、チンチンのお湯をはるんですよ。でね……」
ダウトぉぉぉ!
心のうちで叫びました。
「お兄さん、愛知県出身ですか?」
「ええっ、どうしてわかったんですか?」
「お湯がチンチンって・・・」
「ええっ!方言なんですか?」
そうなんですよ。ふふふ。ははは。
チンチンとは、けっしてヒワイな言葉ではなく、物体が熱いことをあらわす言葉。
最上級は、チンチコチン。
聞くとお兄さんは、岡崎市のご出身。
私のうまれた豊明市の、となりのとなりのとなり。
トキントキンの話もすると、またびっくり。
「えっ、方言なんですか!?」
そうなんですよ〜、でちゃいますよね、おくに。
なんて話をしながら、試着室に入りました。
ワンピースを着て、カバンをかけてみました。
その時持っていたのは、無地でかざりけのない、布でできたフタ付きの、大きめのショルダーバッグ。
それを見た岡崎のお兄さんは言いました。
「おや。ニシンのパイをお届けですか?」
気に入った!
わたしは気分良くワンピースを買って、家に帰ったのでした。
念願の、魔女みたいなへんなおばさんに近づいてきましたよ。
三河のくにより修行に出ております。
ちいさなパンやがありました。
もうすぐお昼だというのに、たなは、すかすかでした。
店がまえからさっするに、朝のうちに売りきれた、というのではなく、まだそろっていない、というようすでした。
レジには、おばあさんがひとり、いました。
あんパン、とかいてあるたなに、パンがたくさんあったので、どれにしようかと、えらんでいました。
まんまるのやら、ながほそいのやら、形がいろいろなのです。
そうしていると、トン、トン、トン、と音がして、かいだんから、やきたてのパンのにおいといっしょに、おじいさんがおりてきました。
おじいさんは、大きな木のおぼんをもっていました。
おぼんの上は、こんなふうでした。
おじいさんに、ききました。
「おじいさん、おじいさん、この、かえるのパンのなかには、なにが入っているのですか?」
おじいさんは、いいました。
「えーっと、なんだったけかな? チョコレートだったかな。クリームだったかな。うーんと…」
「いいですよ。食べてみれば、わかりますから」
どうやら、かえるパンに、かえるは入っていないようです。
「おじいさん、おじいさん、この顔のない、まるいパンは、なんですか?」
おじいさんは、いいました。
「これはね、ゆーふぉー、だよ」
「ゆーふぉー?」
「そう。このパンは、ユーフォーっていうの」
「U.F.O、ですか」
うんそうだよ、と、おじいさんはこたえました。
なかにはなにが…といいかけて、やめました。
だって、食べればわかりますもの。
「ユーフォーをひとつください」
おやつのじかんに、食べました。
まるいパンのなかには、さして甘くないクリームが、ほどほどのあんばいで、入っていました。
焼きそばでは、ありませんでした。
先日、仕事場で宴をひらきました。
ひとつの作品が完成を迎えたので、その披露をかねての打ち上げです。
たまにやりたくなるんです、宴。
数ヶ月に一度、波がやってきます。
大勢の人を呼んでぱーっとやりたいという欲望の波が。
人数は、15人ちょっとの予定。
企画をたてて、ご案内状を送り、お楽しみのプレゼントも用意して。
酒屋に電話して、配達の手はず。
大勢での宴のときは、ビールの小瓶と炭酸水を、瓶でケース買いします。
ビールはそのまま飲めば洗いものが少なくなるし、空き瓶は酒屋さんが引き取ってくれるので、ゴミにならずにらくちんなのです。
飲み物はセルフコーナーをつくることに。
偉い人もそうでない人も、自分のペースで自分でつくって飲めばよろしい。
今回は、参加費を“これぞというツマミを一品”としたので、あと用意するのはお皿だけ。
なじみの古道具屋さんで、胸元にお花の刺繍がほどこされた、真っ白な割烹着を発見。
衣裳も整いました。
当日。
みなさんぱらぱらとやってくるかと思いきや、定刻にどっと人が押し寄せ、いきなりてんやわんや。
いいんです、てんやわんやしたくてやってるんだから。
それぞれに持ち寄ったものを、お皿に盛り、黒板にメニューを書いていきます。
手づくりのお惣菜の人、おすすめの店の品を買ってくる人、バーナーを持参してカレーを温めだす人、個性が出るものですね。
気づけば参加者は20人を越えており、盛況のうちに、宴はおひらきとなりました。
ひとりになった台所には、大量の洗いもの。
明日にしようかな、とも思ったのですが、ちょっと手を出したら止まらなくなり、しだいに “ 洗い物ハイ ” の状態に。
最後のお皿の水滴をぬぐって戸棚にしまい、ゴミ袋をきゅっとしばって、手にハンドクリームをぬりこんでいるときの達成感たるや。
「やってやったわい!」
何もなくなったシンクに無言で雄叫びをあげました。
ほんの一夜の宴だけれど、たくらんで、準備して、本番やって、片付けて、おわる。
この一連が、好きなんですね、きっと。
数日前から風邪の気配がしてカッコントウを飲んだりしていましたが、宴をすぎたら、そんな気配はどこへやら。
だらりと休むよりも、なにかに向かって動いていた方が、元気になるみたいです。
たぶん数ヶ月後に、再び波は押し寄せるでしょう。
つぎは、どんな宴にしようかな。
ひさしぶりに『スナック山田』もやりたいな。
『スナック山田』とは、バーを貸し切って着物のわたしがカウンターに入り、みなさんをおもてなしする、大人のお店やさんごっこ。
“名古屋ナイト”や“向田邦子ナイト”などと銘打って、過去に3回ほど開催しました。
今度は何ナイトにしてやろう。
たくらんでいるだけでも、ゆかいなものです。
]]>そういった規則正しい生活とは、ほぼ無縁の状態でくらしています。
そうしたくてそうなったんだから、万々歳、ではあるんですが、困るのは、いつ自宅で食事をとれるかわからず、食材がストックできないコト。
野菜で多めに買って許されるのは、玉ねぎくらい。
基本的には、食べるときに食べるぶんだけ。
気が大きくなってキャベツ一玉なんて買ってしまうと、味わうというよりも、「食べ尽くす」「やっつける」という目的で台所に立つはめに。
お肉は、ベーコンや豚肉をたまに買ってきて、小分けにして冷凍。
なんてのをごくたまに気が向いたときに。
気が向かなけりゃなにもなし。
そんな貧相な我が家の冷蔵庫に、最近になって、新レギュラーが加わりました。
よく知っていたのにこれまで完全にスルーしていた食材が、ある時たまたま目にとまり、これだ!と飛びついたのです。
なつかしいそいつは、魚肉ソーセージ。
魚肉ソーセージは、今でもあのオレンジ色のビニールにつつまれていました。
「ヘルシー」なんていうキャッチコピーをぶらさげて。
たとえば、朝ごはん。
生でそのままサラダにそえて。
焼いて目玉焼きをとなりにおけば、ベーコンエッグならぬ、「魚肉ソーセージエッグ」。
焼いたのを卵でとじでもよろしい。
昼ごはん。
野菜いために。やきそばに。
夜のおつまみ。
スライスして生のまま、マヨネーズ&マスタードをつけて。
焼いて黒こしょうをふってちょっぴり大人の味に。
こいつ、万能じゃないか!
こんなすばらしい食材を、どうして今まで使っていなかったのか。
それはきっと、こどものころのイメージのせい。
留め具を歯でかみちぎったときの、カチリとした金属の感触。
タテにぴーっと一筋に切れたら成功なのですが、ひとたびうまくいかないと、ぐるぐるまわそうがひっぱろうが、永遠に食べられないんじゃないかと絶望させられました。
肉は贅沢品だから、しかたなく魚で…という貧乏くささもなきにしも。
小腹がすいたらこれでも食っとけ、と投げつけられていたようなものが、いまや「特定保健用食品」っていうんだから、時代はかわるものですね。
保存料着色料なしで、カルシウムが豊富なんですって。
金属をぐりぐりと噛み切らなくてもよい、ナイスな仕組みも開発されています。
賞味期限が長く、1本食べきりサイズ、生でよし焼いてよし。
ひとりぐらしでねりもの好きの私に、うってつけすぎる!
我が家の冷蔵庫の野菜室には、いつ飲むかわからないピンクのシャンパンと、魚肉ソーセージの束が横たわっています。
魚肉ソーセージ業界のみなさん、私がすっかり忘れているあいだも、魚肉ソーセージをつくり続けてくれてありがとうございます。
これからもお世話になります。
ぼんやりしていたら10日くらいすぐに過ぎてしまいますね。
みなさんいかがおすごしですか?
この10日で、東京は桜が咲いて、もう散ろうとしています。
花見する間もありゃしない。
この10日のあいだで私がいちばん「ええっ!」と声をあげたのは、
「田中宥久子さん、逝去」
のニュースでした。
67歳…まだお若い…。
田中宥久子さんは、「造顔マッサージ」で有名な美容家。
私の顔をやわらかくしてくれた恩人です。
こどものころからバスケットボールみたいにパンパンにふくれていた私の顔。
バウンドしたが最後、体育館の天井につきささるほどの弾力でした。
大人になると、そこに“むくみ”が加わって、いつだって、かたくてまんまる。
そんな顔に化粧をしたところでとなげやりになり、化粧をしないと顔もろくすっぽ見なくなる。
長年ほったらかされていた私の顔に、変化をもたらしたのが、田中宥久子先生の「造顔マッサージ」です。
出会いは、雑誌「クロワッサン」。
10代のころから愛読する、40代のための女性雑誌。
そのときの特集が、ちまたで話題になりかけていた「造顔マッサージ」で、田中先生のインタビューなどとともに、自分でできるやり方が紹介されていました。
本来ならば田中先生考案のクリームを使用するのですが、ふだん使っている万能ゲルクリームをぬって、ためしにやってみることに。
指先に力を入れてぐりぐりと。
かたいところを押しながら、首の下のリンパに流してゆく。
最後までやってから、鏡を見てみました。
しまった。
やる前の顔をちゃんと見てなかった。
何がどう変わったのかよくわからないまま、翌日。
出勤すると、上司から、
「どうしたの、顔。化粧してるの?」
してないですよ。
はっ!もしや。
仕事で会った人からも、
「やせました?」
人生でやせたことないですよ。
やはりこれは。
なじみのバーに顔を出したら、
「何かいいことあったんですか?雰囲気ちがいますよ。わかった!お化粧してるんだ!」
ちがいない!
「造顔マッサージ」の効果だ!
田中先生のおっしゃるままに顔をぐりぐりしたら、顔の内部にたまりにたまっていたなにかしらが、どっと流れ出たようです。
それからクリームをぬるときは、自己流に手抜きしながも、ちょいちょいと顔をぐりぐり。
人に会ったりするときは、お化粧がわりに、いつもより入念にぐりぐり。
しばらくさぼると、電車の窓に、自分によく似た知らないおばさんが映っていてぎょっとします。
あわててぐりぐり。
もし先生がいなかったら、私の顔は重力にあらがうことなく、溶けたバスケットボールのようになっていたことでしょう。
田中宥久子さん、良いマッサージを考案してくださって、それを教えてくださって、ありがとうございました。
きっと天国でも、たくさんの女性の口角をあげ、目をぱちりとさせ、ほうれい線を消してゆかれることでしょう。
ご冥福をお祈りいたします。
近所の喫茶店に顔を出さずにいたら、閉店してしまった…ということを書きました。
実は、その喫茶店のとなりにあった八百屋も、すこし前に閉店していました。
1本道の商店街には、八百屋、肉屋、魚屋、そうざい屋、レトルトものや小麦粉なんかも売っている八百屋っぽい店などなど、昔ながらのひなびた店が点々と存在しています。
通りを抜けたところには大きなスーパーもあるのですが、なるべく個人の商店で買うようにしています。
本も、大型書店やコンビニで買うのは極力控え、名もなき小さな本屋で購入。
「シャッター商店街にはすまい」
強い心持ちで日頃の買い物に臨んでいます。
ひなびた店が立ち並ぶ通りのなかに、ぽつりと小さな文房具屋があります。
そこだけは、昔ながらの、ではなく、外国の文具を取り扱うおしゃれな店。
店主選りすぐりのハサミやホチキスやノートやペンが、ぎっしり品良く並べられ、文具好きの私には、オアシスのような空間。
しかし客が3人も入れば大渋滞となる小さな店。
文具などというものは、基本的に数百円の世界。
昼間その通りを歩くのは年寄りばかり。
「私が買わねば誰が買う」
使命感に燃え、いつ使うかもしれない文具を手に取り、せっせと小銭を放出してきました。
数日前、その店の前を通りかかったら、窓に貼り紙がしてあります。
白いコピー用紙に、黒い字でなにやら印刷してある。
愉快なお知らせではなさそうだ。
来るべきときが来たか…。
覚悟して近づいてみると、そこには意外な内容が。
「移転します。」
移転先の地図を見ると、となり町の大きな商店街。
それも、人通りがめっぽう多い道のバス停の近く、という一等地。
しかも、広い。
買いすぎたー!
繁盛させちゃったよー!
まちがえたー!
そうかぁ、そうきましたか。
軌道にのっちゃいましたか。
あと残っている好きな店は、おばちゃんがひとりでやってるうす暗いそうざい屋、インド人経営の肉屋、おでんだねの専門店…。
これらのなくなってほしくない店とどう向き合っていくかが、これからの課題です。
行かないとつぶれるし、繁盛させすぎてもヨソにいっちゃうし。
商店街との付き合いかた、ひとすじなわではいきませぬ。
ひとり暮らしにちょうどよい、ごくごく普通のアパート。
決め手のひとつとなったのが、近所に喫茶店がたくさんあったことでした。
ひとりでお話をつくったり書いたりという仕事は自宅でするのですが、家のなかにはそこかしこに誘惑が。
テレビとか本とかお菓子とか布団とか。
ふだんはやらないくせに、忙しいときにかぎって、ひきだしのなかを整理しだしたり、鍋を磨きだしたり、家具を動かしだしたり。
テストの前のあの衝動に、たびたび見舞われてしまいます。
部屋がきれいになるのはけっこうだが、肝心な仕事がはかどらない。
そんなときは、喫茶店にかけこみます。
ファミレスではやかましく、図書館では静かすぎる。
大家族で育った私には、適度にざわざわしている喫茶店が、いちばん集中できる場所なのです。
歩いて10分以内の場所に、喫茶店やカフェの類は5軒ほど。
いちばんよく行くのが、昔ながらのしゃれてない普通の喫茶店。
チェーン店ではなく、そろいの制服やエプロンもなく、メニューも普通。
コーヒー、カフェオレ、ココア、ウインナーコーヒー。
ホットケーキ、サンドイッチ、カレー、ハンバーグ、スパゲッティ。
味、サービス、インテリア、どれをとっても可もなく不可もなく。
なので客は、多すぎず少なすぎず、近所のおばさんやおじさんの集いの場といったところ。
その程よいなんともなさが気に入って通っていたのですが、数ヶ月前、歩いて20分の場所に、新しい喫茶店ができました。
名古屋育ちの私が待ち望んでいた「コメダ珈琲」が、ついに東京に。
愛知県に網の目のようにチェーン展開する、メジャーだけど普通の喫茶店。
席がゆったりしていて、おしぼりが出て、コーヒーを頼むとお菓子がついてきて、新聞や雑誌がそろっている、名古屋の普通の喫茶店。
もちろんモーニングもありますとも。夜までやっておりますとも。
そんなのができたらあなた、多少遠くても行きますよ。
うれしくって、てくてく歩いて通ってました。
先日、ちょっとコーヒーでも飲んで帰ろうと、ひさかたぶりに近所のほうの普通の喫茶店に顔を出したら、ショッキングな貼り紙が。
「閉店します」
ええっ!
レジのお兄さんに思わず話しかけました。
「閉まっちゃうんですか!?」
「はい、ここは閉めて、ちがう場所でラーメン屋をやります」
ええっ!
ラーメンなんてメニューになかったじゃないの。
なにその方向転換。
そうか〜閉まっちゃうのかぁ。
甘ったるいココアが飲めなくなっちゃうのかぁ。。
コーンまみれの辛くないカレーが食べられなくなっちゃうのかぁ。。。
鉄板の上に細くて味のないスパゲッティがしきつめられて、その上に、豚バラともやしを炒めて甘辛く味付けしたのがのっていて、その上にバターがのっている謎の料理「鉄板ポーク」がもう食べられなくなっちゃうのかぁ。。。
さみしいなぁ。
コメダ珈琲にうつつをぬかしている間にこんなことに。
浮気した私がわるいのか。
なくなってその価値がわかる、近所の喫茶店。
これ以上「近所の喫茶店」がなくなるとこまるので、これからは「近所の喫茶店」をめぐっていくことにします。
おしゃれなカフェは大丈夫そうなので、昔ながらの、あまり人のいない方を重点的に。
つぶれそうな方から順に足しげく。
でもなぁコメダ…小倉トースト…ミルクコーヒー…シロノワール…。
やっぱり、コメダと近所、半々にします。
]]>マキタの充電式クリーナー。
ショッピングセンターのそうじや、作業現場などでよく使われている、コードレスの掃除機です。
掃除機のコードがいまいましくてしかたのない私は、ずっとコイツにあこがれていました。
軽そう、楽そう。
仕事場の上司とホームセンターに行ったときに、
「好きなものを買ってやる!」
と言われて、私はすかさず「これ!」とマキタの掃除機を指差しました。
仕事場で使ってみたら絶好調。
壁にフックでひっかけておき、ゴミやホコリが気になったら、ひょいと手に取り、シュインと吸い込む。
ヘッドが小さいので家具の隙間や棚の下にもスイスイ入ります。
自宅の掃除機もこわれかけていたので、いきおい、同じものをネットで購入。
マキタくんがやってきて、我が家からホコリが消えました。
マキタくんとの同棲生活がはじまってすぐのころ。
とあるショッピングセンターでトイレに入り、洗った手をブオーッと乾かしていると、すぐ横の掃除道具入れの前で、2人の女性がなにやら話をしています。
そうじのおばちゃんと、買い物客の年配の奥様。
奥様「その掃除機、なんていうの? ほしいのよ、それ」
おばちゃん「ああーこれですか。え〜と、なんていうんだろう」
思わず身を乗り出しました。
私「マキタですよ!」
奥様「マキタ?」
おばちゃん「あ、ほんとだ。マキタって書いてある」
私「マキタのコードレスクリーナー。私、持ってますよ」
奥様「あら、そう。最近手が悪くなってねぇ、掃除機が重くて仕方がないから、こういうのいいなぁと思って」
私「らくですよー。充電もけっこう持ちますし」
奥様「どこで売っているの?」
私「ホームセンターや、インターネットでも売ってますよ」
奥様「となりのホームセンターにあるからしら」
私「在庫はわかりませんけどね。マキタの掃除機って言えば、ホームセンターの人ならすぐに分かると思いますよ」
奥様「掃除機って出すのがおっくうなのよねぇ」
私「これだったら手軽ですもんねー」
掃除道具入れの前で話し込む女は、3人になっていました。
友人の家にあるマキタの掃除機は、赤。
赤マキタ。
「かわいいねぇ。便利よねぇ。意外と強いしねぇ」
見るたびに盛り上がります。
女たちはいつだって、アンタの話でもちきりだよ。
モテモテだね、マキタくん。
昨日の夕方、帰宅しましたら、うれしい発見が。
私の暮らすアパートの2階の、反対側の角部屋に、意外な方が住んでらっしゃいました。
なぜそれがわかったかというと、洗濯物が干してあったから。
ガチャピンさん。
ご近所さんだったとは。
手狭ではないですか?
ドアの幅しかない玄関、アタマぎりぎりじゃないですか?
壁や天井は真っ白ですから、黄緑色がさぞ映えることでしょう。
ブログを拝見しましたら、相撲部屋で力士に投げ飛ばされていましたね。
どうりで。
砂を洗い落とすの、大変だったでしょう。
今は冬だから大丈夫かもしれませんが、夏にベランダに干すと、隣の森から虫が飛んできて、その服……肌……皮……黄緑色のものにたかると思いますので、気をつけてくださいね。
その森にはタヌキもいますね。
ちょうどあなたの部屋の真ん前で、私はそれに会いました。
なかなかかわいいヤツだったので、食べないでもらえたらうれしいです。
角部屋は窓がたくさんあって、明るいのはよいことですが、冷えますよね。
首から下に黄緑色のものがない今、寒さに震えていることとお察しします。
どうかお風邪など召されませんよう。
大都会の近所づきあいの希薄さに甘えて、ご挨拶にも伺わず、失礼しました。
いつかそこいらでお会いできることを楽しみにしております。
ガチャピン様。
歴代の財布は、ほとんど、がまぐちです。
ぷちんとひらいて、ぷちんととじる。
手のなかに、ころんとおさまる。
買い物カゴとがまぐちを持って商店街の八百屋に行けば、気分はサザエさん。
今のがまぐちは、使いはじめて10年くらいたつでしょうか。
ふたつ折りにしたお札がちょうど入る、見た目はごく普通のがまぐちなのですが、容量がなにしろすごい。
ぷちんと開くと、じゃばらのように広がって、ポケットが大小7つ。
お札も小銭もポイントカードも領収書も、ばこばこ入ります。
皮はくたりと手になじみ、壊れることなく、お金の出し入れに不自由することなく、何の不満もなく使い続けていたのですが、最近、ある重大な問題に気づきました。
それは、うすぎたない、ということ。
もとも渋い桃色だったのが、くすむだけくすみ、部分的に色落ちし、金属ははげ、見るも無惨な状態です。
私がお金だったら、こんな財布に入りたくありません。
こりゃいかん。
大人の女が持つものといえば、やはり長財布でしょうか。
お札は折らない方がいいとか、黄色がいいとか、いろいろ言われますよね。
もうずいぶん昔、20代なかばごろ。
ほんのいっとき、黄色い長財布を手にしたことがあります。
妹が、ごみばこに捨てようとしたのをもらったのです。
でかくて黄色い、ルイヴィトンの長財布でした。
名古屋の娘といえば、ブランドもの。
私が持っている布のかばんなど「ずたぶくろ」と呼ばれ、哀れなまなざしを向けられていました。
当時の妹はかなり、ぶいぶい、といわしていましたので、部屋じゅうブランドものだらけ。
ヴィトンといえども、気に入らなけりゃ、ただのごみ。
そのごみになる寸前の財布を、
「わたしが使ってたらうけるかな」
というだけの理由でもらいました。
ずたぶくろから現れるその財布は、案の定、笑いをさそいました。
でかくてポシェットに入らない、などの理由で使わなくなったのでしょうが、今思い返すと、黄色い長財布時代、私は、稼いでいました。
かけだしのフリーライターにもかかわらず、なんとなく仕事をいただいて、週2日くらい働けば、生活できるくらい。
東京に引っ越す資金をためるべく、短期間に馬車馬のように働き、結果、上京してから1年くらい、ぷらぷらしていました。
あれは、高級な黄色い長財布のおかげだったのか。。。
上京後、がまぐちを使い続けている私に、もうけ話が舞い込んでくることは、ただの一度もありません。
立派な財布を手にすれば、がっぽがっぽで、うはうはになれるのだろうか。
私にも、いわすことができるのでしょうか。
ぶいぶい。
どこからその音がでるのでしょうか。
ぶいぶい。
一度でいいから聞いてみたい。
ぶいぶい。
そのためには、うすよごれた財布から卒業せねばなりません。
しかし、ぷちん、も捨てがたい。
すべての要望をかなえるのは、
高級ブランドで黄色くて長くて容量が大きくてポケットがたくさんあってポシェットに入る地味ながまぐち。
そんなものが、この世にあるのだろうか。
]]>塗るのも直すのも落とすのもめんどうだから、化粧はやめました。
髪も1本に束ねるだけ。
洗うのも乾かすものもめんどうだから、男だったら絶対坊主だったでしょう。
爪を切るのもめんどくさく、生えた先から溶けていってほしいと切に願っています。
このところ強く思うのが、もう服を選びたくない、ということです。
機能優先、おしゃれ度は低く、パターンもそう多くありません。
たんすの中は、紺やグレーや茶色などのくすんだ色ばかり。
選ぶほどの服はないはずなのに、それでも、めんどうでしかたないのです。
前回にひきつづき、スタジオジブリ作品「魔女の宅急便」の話をいたします。
私の理想の格好は、主人公キキの服です。
魔女の掟で、修行中に着てよいのは、飾り気ひとつない真っ黒のワンピースのみ。
いいなぁ。
ファッションというものにあまり頓着のない私ですが、持っている服のなかで、お気に入りの一枚があります。
キキと、「部屋での仕事着こそ一張羅」という向田邦子さんの言葉に影響をうけて、数年前に購入した水色のワンピース。
丈夫な綿、長袖、低いスタンドカラーの襟、すそまでまっすぐ伸びるAライン、大きなポケットふたつ、丈はひざちょうど。
マーガレットハウエルというブランドのマーガレットハウエルさんの仕事着がモデルになっているとか。
主に、旅の仕事の最中、ホテル内で着用しています。
室内は、年中だいたい同じ気温なので、それ一枚ですごせます。
頭からずぼっとかぶって、それでおしまい。
仕事するもよし、くつろぐもよし。
伸びず縮まずしめつけず、あぐらもかけます。
もう何年も着続けているのですが、これがすこぶる快適なのです。
見た目はほぼパジャマなので、外出することははばかれる。
でも本当は、毎日それを着て過ごしたいくらい。
理想は、同じ形のワンピースが7枚あって、日替わりでそれを着る。
パンツも肌着もくつしたも全部一緒の色と形。
それを週末にまとめて洗う。
洗濯物も、たんすの中も、どれだけすっきりすることでしょう。
しかし煩悩に溢れる未熟な私は、暑い寒いとか、今日は大人と打合せ、とか、肉体労働の現場、とか、いろいろ理由をつけては、似たような色合いの、多少形の違う服をとっかえひっかえ着ておるのです。
いさぎよく「山田の制服」を決めてしまいたい。
それを何十年も着続けたい。
そしてそのまま年をとり、
「毎日同じ服を着ているかわりもののおばあちゃん」
と近所の人にささやかれたい。
万能ワンピースを探す旅はつづきます。
まずは煩悩すてねばなりませぬ。
]]>高校時代からの友人と、
ときどき、お互いの家でご飯を食べてお酒をのみます。
彼女もひとりくらし。
お惣菜を買ってきたり、ありあわせのもので適当に料理したりの気楽な宴。
支度も整ってさあのもうか、となったあたりで、
どちらかが「今日は何にする?」と切り出します。
選択をせまる「何」とは、ジブリのDVD。
「今日はどのジブリ作品を見ながらお酒をのもうか」
というのが、質問の意図するところです。
彼女と部屋でのむときは、きまってジブリ。
もう全部知ってるから見なくてもいいし、たまにちらりと見ても楽しいし、ちょうどよいのです。
見る作品は、ふたりのそのときのコンディションによって決まってきます。
のほほんとしたいときは「となりのトトロ」
元気で前のめりなときは「千と千尋の神隠し」
ちょっと元気がないときは「魔女の宅急便」
よっぱらってきたら「ハウルの動く城」
などのように。
ざわざわした心をなだめるときにもうってつけの「となりのトトロ」。
山や田んぼ、おばけ好きのやさしいお父さん、一度でいいからお腹にしがみついて空を飛びたいたいトトロ…。
平和な要素しか見あたりません。
ただ、ひとたび私に「あるスイッチ」が入ってしまうと、もっとざわざわしてしまうという作品でもあります。
そのスイッチとは「メイのバカ!」です。
お姉さんのサツキと、妹のメイ。
メイはわがままを言ってサツキをこまらせます。
三人姉妹の長女である私は、
どうしたってサツキに感情移入してしまう。
雨のなか、バス停でお父さんを待っているふたり。
なかなかお父さんがこなくて、メイは眠くなってしまいます。
サツキはカサをさしながら、メイをおんぶします。
5つ下の妹を、保育園に迎えにいった10歳ごろの出来事。
その日はよりによってお昼寝の布団を持ち帰る日でした。
肩に大きな布団をかけ、手をつなぎ、歩きます。
序盤も序盤にぐずる妹。
「もう歩けない!歩きたくない!やだやだ!」
いやいや、そういわれても。
テコでも動かず号泣がやむ気配もないので、布団を抱え、妹をおんぶして、家に帰りました。
あの重み。
わかるよ、サツキ!
妹め。
メイが勝手に家を出て、迷子になります。
町の衆が総出で探しまわり、大騒動に。
たしかこれも同じ10歳くらいのころ。
母と、ひとつ下の妹と、親戚のおばさんの家に行きました。
おばさんの家から、妹とふたりで近所におつかいにいくことに。
目的地に着き、用事をすませ、来た道を戻っていると、妹が
「こっちにいきたい」
と知らない道を指さします。
私は
「だめ、ぜったい」
と止めました。
帰り道がわからなくなったらどうしようというのでしょうか。
しかし妹は、頑としてゆずりません。
「こっちにいく!」
「だめ!」
「こっちにいくんだもん!」
「だめったらだめ!」
「じゃあひとりでいく!」
「だめ!」
「いくもん!」
「もう、かってにしなよ!」
私はひとりでおばさんの家に帰りました。
妹は案の定、迷子になりました。
警察まで出動する始末。
あの、のしかかる責任感。
わかるよ、サツキ!
妹め。
妹という生き物は、どうしてこうも自分勝手なのでしょうか。
困ったら誰かがなんとかしてくれる。
わがままを言って、甘えて、許されて。
「おんぶ〜」とかいっちゃってさ。
しかし今となっては、
おとなしく真面目なはずだった長女が、
東京でよくわかない仕事をしてろくすっぽ帰って来ず、
妹たちが実家を切り盛りしているわけですから、
かたじけないといいますか、めんぼくないといいますか。
自分勝手なわがままが、大人になってヘンな形で現れてしまいました。
…とまあ、こういった一連が、トトロを見ながらざわざわっとしてしまうコトなのです。
さてさて。
思い出話をつらつらと書いてしまいましたが、
今宵会うのは、遠くの妹ではなく、近くの友。
何にしましょうか。
「魔女の宅急便」にしようかね。
おちこんだりもしたけれど、げんきでいようじゃないか。
都会の片隅で、肩をたたきあうとします。
毎年秋ごろになると、実家からかかる電話の〆の言葉が決まってきます。
「餅つきにはこれるの?」
愛知県にくらす山田家は、毎年12月30日に餅をつきます。
名古屋駅から急行電車で約15分、その駅から徒歩10分。
バリバリの郊外の住宅地なのに、なぜか我が家だけは畑を耕し、井戸の水をくみ、餅をついています。
「正月は帰ってくるの?」とはあまり言われません。
とにかく、餅つき。
餅つきの出欠がどうしてもとりたいようです。
餅つきには、叔父叔母従兄弟やその友人たちが子供も連れてわんさかやってくるので、実家を離れて15年以上もたつ私なんて別にいらないはずなのに。
「餅つきには全員集合」
これが大前提なのです。
12月30日。
早朝、まだこちらが布団に入っているうちから、パチパチと薪が燃える音や、ぺったんぺったんと餅をつく音が聞こえ始めます。
続々とやってくる知っている人や知らない人。
案の定、私はとくにやることがありません。
居場所のない私は、喧噪からそっと離れ、甥っ子の勉強机に座り、自由すぎる自由帳をのぞき見たりしながら、息をひそめていました。
しかし定期的に呼び出しが入ります。
「あんころもちだよー!ねーちゃーん!あんころもちやるよー!ねーちゃーーーん!」
ねーちゃんとは、一族の長女である私のこと。
「ハイハイ」と机を離れ、手を洗い、縁側にむかいます。
あんころもちは、もちにあんこを詰めたもの。
餅がやわらかいうちに丸めなければならないので、スピードが命。
女は全員この作業をするという義務があります。
こどものころから、これは「絶対」の掟。
男衆が餅をつく。
つきあがる。
女衆が。
あんこを。
つめる。丸める。
不思議なもので、何年ブランクがあろうとも、餅とあんこを前にしたら、勝手に手が動くようになっています。
私のとなりには、誰の子かもわからない、名前も知らない5歳くらいの女の子。
女は全員集合なので、彼女は当然のようにそこに座り、見よう見まねで餅をのばしています。
「まんなかをのばしたら、あんこがでちゃうよ」
つい声をかけました。
「あんこをのせたら、ふちっこをつまんでうすくしながら、くっつけて。そうそう、じょうず。手に粉をつけて。はい、両手でころころころころ」
彼女には、「自己責任」という言葉を教え、完成したあんころもちを、七輪のところに持っていかせました。
できそこないの餅は自分で食べるのものルールのうち。
幼き私もこうやって、おばあさんたちに教えられていたんでしょうね。
脈々。
餅つきはこのように先祖の代から受け継がれているわけですが、
唯一のネックは、山田家がおしなべて、
「餅をつくのは好きだけど、餅はあんまり好きじゃない」
ということ。
だいたいいつも年末ごろまで冷凍した餅が残っていて、
「誰か食べて〜」と餅のなすりつけあいになります。
つかなきゃいいのに。
でもまたつくんでしょうね。
だってセイロが、まさかの新品でしたもの。
「あと30年はできるな〜。がっはっは」
還暦を越えたおじさんたちが笑ってました。
静かに見守ろうと思います。
どちらも全国どこに行っても、さして建物内の様子はかわらず、
気温も湿度も似たようなもの。
毎朝起きて、
「はて。今は日本のどこにいるのだ」
と思い出せないこともたびたび。
なので、迫りくる大寒波!というのにもピンときてませんでした。
「冬なのか。冬なのね」
自分にそう言い聞かせていたのですが、ついに、
「冬が来た!」
と実感する出来事が起こりました。
それは「暴風雪」の予報がでる札幌でのこと。
風呂に入るときに、私はある体の異変に気づきました。
かかとが、ガサガサだ。
ああ、とうとう冬が来てしまった。
何の手入れもしていない、ほったらかしボディに顕著にあらわれる、老い。
子どものころは、軽石でがしがしとこする大人が不思議でしたが、減っちゃうよ、と思っていましたが、今ならばわかる。
こんな余計なもの、こすりおとしてしまいたい。
なかったことにしてしまいたい。
しかし旅先で軽石は買いたくない。
化粧水や保湿クリームをたんまりぬって靴下を履いてみたりもしたけれど、効果なし。
日を追うごとにガサガサは鋭利になってゆき、もう大根がすりおろせてしまいそうです。
もはや、武器です。
やはり、あれしかないか。
最後の頼みは、、、
なめらかかと。
かかとのためだけのクリームを買うなんて贅沢だと自らを律して控えてきましたが、こうなってしまったらもう、かかとをなめらかにするのに特化した「なめらかかと」に頼るほかあるまい。
薬局に走り、なめらかかとスティックタイプを入手。
この巨大なリップクリームのような「なめらかかと」を、風呂上がりのかかとに、ぬりぬり。
そして、就寝。
翌朝、目覚めてまっさきに布団のなかでかかとを触った私は、愕然としました。
なぜ私は今までこれを使ってこなかったのだ!
かかとが、なめらかになっている。
いきなりなめらか。つるつるです。
今じゃ毎日、かかとやひざやひじに、せっせと、ぬりぬり。
「なめらかかと」、商品名にうらぎりなし。
私はこれからも、
トイレの後には、「トイレその後に」をシュッとやり、
「サカムケア」でさかむけをケアして、
「ミミクリン」で耳をクリンとそうじしていきたい。
ときおり襲ってくる「こむらがえり」も「コムレケア」さえあれば、こわくない!
頼りにしてますよ、小林製薬さん。
なめらかかとでわたしのかかとをなめらかにしてくれて、どうもありがとう。
***お知らせ***
徳間書店さんから毎月発行されている文芸誌『読楽』にて、
連載がはじまりました。
タイトルは、
「山田山の歩きかた」。
山田山には、ふしぎな生き物がたくさん生息しています。
発売中の2013年1月号は、山田山に自生する「野生のこけし」をご紹介。
こけしをおいしく食べる方法、こけしを使って応急手当、など、
福島モンタのイラストとともにお楽しみください。
同じタイミングで連載がはじまったのが、漫画家のサメマチオさん。
本屋さんで緑色のマチマチしている本を見つけたら、読んでみてくださいね。
言い方を変えると…
おでん→お好み焼き→水炊き→お好み焼き→牛タン→手羽先→中華。
日本は、各地においしいごちそうが待ち受けています。
ホテルで暮らし、仕事場ではお弁当がでるので、ずっと外食がつづいています。
すでに胃はくたくたなんですが、次なる地は札幌。
カニが私を待っている。
「胃の調子が…」などとたわけたことを言っておる場合ではありません。
備えねば。
私の胃腸を整えてくれるのは、山田家の健康を支える「百草丸」
と、
キャベツ。
旅から帰ってきてすぐにつくって食べたものは、
私の唯一の得意料理である「キャベツのステーキ」でした。
キャベツのステーキとは、
「キャベツを8等分してフライパンで焼く」
というそれだけのもの。
フライパンにはフタをして、ほぼ蒸し焼き状態。
味付けは、塩のみ。
写真に撮っても全然おいしそうじゃないのは重々承知ですが…
…失敗したわけじゃないです。
真っ黒が、正解。
この焦げたところの甘みがたまらん。
キャベツ。
すっごく食べたかったので、八百屋でいきおいこんで、まるまるひとつ買ってしまいました。
家にいられるのはあと3日。
残るキャベツは4分の3。
食べる人間は私ひとり。
どうしてくれよう、キャベツ。
キャベツーよりキャベツ。
キャベツよ、私の胃腸を整えておくれ。
*以前「百草丸」をご紹介した際、
「我が家はこれです!」
と読者の方からおたよりを頂戴しました。
その名も「毒掃丸」
「毒」って!
毒を一掃する丸いやつ。
こちらにも専用の数え棒がございます。
Tさん、おたよりありがとうございました。
あなたの町の「百草丸」情報、おマチしております。
厳島神社のある宮島まで足を延ばしました。
世界遺産をありがたくおがみます。
その後のんびりと参道をてくてく。
もみじまんじゅうの「やまだ屋」を発見。
「やまだ屋」。
なんのひねりのない名前のまんじゅうやがよくぞこんな立派に。
おがみます。
ここでは買い損ねてしまったのですが、後日「やまだ屋」のもみじまんじゅうを、お客様より頂戴しました。
レギュラーサイズを想像して箱をあけたら・・・
1個!!!
さすが、やまだ。
単純だけどキレがいい。
宮島の名物といえば、しゃもじです。
努力とか根性とか家内安全とか書いてあるおみやげしゃもじがたくさん売っています。
お店の方が直筆で書いてくださるというので、オリジナルを発注しました。
「山田」です。
簡単な字ほど難しいのよね〜と、奥さん苦笑い。
これさえあれば、大好きな白いご飯がいつまでもお腹いっぱい食べられそうです。
おがみます。
いつか我が家の表札に・・・。
宮島には、「山田のあまぐり」もありました。
生まれてこのかた山田家の食卓の脇に置いてあり、それを見ない日はなかったので、日本じゅうの家庭にあるものだと思っていましたけれど、どうやら違うことがわかってきました。
ひゃくそうがん、と読みます。
食べすぎ、胃のむかつき、消化不良などに効く胃腸薬です。
ざっくり言うと、正露丸のようなもの。
その真っ黒な粒は、キャビアよりは大きいけれどイクラよりは小さく、
そして、くさい。
幼少のころより、ちょっとおなかが痛いと、
「大丈夫?」
より先に、
「百草丸のんでなさい」と言われていました。
のむと、必ずなおりました。
おなかをすぐにこわす私にとって、百草丸は、お守りのようなもの。
タッパーの赤ちゃんみたいなのに入れて、いつなんどきお腹をこわしてもこれがある、という安心感のもと、東京砂漠をひとり歩いています。
ただいまお仕事で演劇作品の現場にいますが、全国を旅するなかの荷物にも、もちろん百草丸。
誰かがおなかが痛いと聞きつけると、私は百草丸の瓶を持ってとんでいきます。
「これを飲んでください!」
「なにそれ」
「百草丸です」
「なんだよそれ」
「これさえのめばもう大丈夫。さ、手のひらを出して」
「何粒のむの?」
「それは適当に。このくらいですかね」
(じゃじゃっと出す)
「こんなにのむの?…うわ、くさ!」
こんなやりとりを、一体どれだけの人と交わしたことでしょう。
百草丸を数えてのんだことなぞありません。
いつも適当。
こんな小さい粒をちまちま数えていられるかってんだ。
先日、実家で、ある不思議な物体を発見しました。
それが何なのかわかったとき、私はひとり声をあげて笑い、「画期的!」と叫びました。
iPhoneをはじめて見たときと同じくらいの衝撃でした。
それがこちら。
百草丸数え棒です。
こんなものを発明する日本人はすごい。
ラベルを読み、大人は1回20粒ということを確認。
へ〜そうだったんだ。
さあ、人生ではじめて、百草丸を数える時がやってきましたよ。
おおー。10粒!
何度でもおかわりしたくなる気持ち良さ!
ああ、この棒で百草丸をすくって、早く誰かの手の平に乗せたい。
誰かおなかこわさないかなぁ。
きっかり20粒をはかり、胃腸の調子を整えてあげたい。
お腹がいたくなったら山田をお呼びつけください。
百草丸と百草丸数え棒を持って、あなたのもとに駆けつけますよ。
小林賢太郎さんは、片桐仁さんとのコントの2人組「ラーメンズ」としてデビュー。
ソロパフォーマンスや演劇など、舞台を中心に活動しています。
彼が年に一度だけテレビに登場するコント番組が、NHK BSプレミアムの『小林賢太郎テレビ』。
その第三弾となる『小林賢太郎テレビ3』のDVD&Blu-rayが、10月17日(水)に発売されました。
なぜに突然、「山田にまつわる100のこと」で小林さんのDVDのお話をしているかと申しますと、私の応援する「岩手県山田町」と関係なくないからであります。
このDVDには、山田町のすぐおとなり、大槌町の
「吉里吉里駅(きりきりえき)」
が登場しているのです!
番組のなかに「トツカク」というコントがあります。
トツカクとは、戸塚区のこと。
トツカク・トツカク・トツカク・トツカク・・・・・
繰り返して言うと、音楽のようになってきませんか?
戸塚区のほかにも高津区とか津とか支笏湖とかたくさんの地名を並べて、ひとつの曲をつくりました。
テレビで放送されていた画面は、小林賢太郎さんとスタッフが集めに集めた駅や看板の写真で構成されており、どうしても写真が撮れなかった一部分だけ、地図が使われています。
番組を制作していた昨年夏は、吉里吉里駅に番組スタッフが行くことがかなわず、地図での登場だったのですが、DVD化にあたり、山田マチ、吉里吉里駅の写真を撮ってまいりました!
今年の春のこと。
大槌町で働かれている方に、町を案内してもらっていたとき、その看板を見つけた私は、とっさに叫びました。
「吉里吉里駅に私を連れてって!」
吉里吉里駅のあるJR山田線は被害が大きく、沿岸部は現在、運行していません。
使われていない吉里吉里駅のホームに立ち、
「やっと会えたね…」
感無量で駅の看板を見つめ、一心不乱に写真を撮る私を、案内してくださった方は不思議そうに眺めていました。
大槌町は、ひょっこりひょうたん島がある町。
これは、私の家の台所にかかっているふきん。
「大槌刺し子プロジェクト」といって、震災で家や仕事を失った女性たちが、ひと針ひと針縫っています。
タグには小槌。
ただただぐっときて買いました。
「きりきり」といい「ひょっこりひょうたん島」といい、この「かもめふきん」といい、私のなかの大槌町のイメージは、「かわいい」なんですよねぇ。
さて話は『小林賢太郎テレビ3』に戻りまして。
DVDの宣伝文句には「未放送映像も収録!」と紹介されているのですが、私にとって最大の未収録映像は、この部分。
まばたきしている間にすぎてしまうような、1秒にも満たない「吉里吉里」ですが、私にとってはとても思い入れの強いワンカットであります。
『小林賢太郎テレビ3』をごらんになる方は、
♪トツカクトツカクトツカク…バンデンバンデンキリキリタカツクバシ…♪
の吉里吉里をどうぞお見逃しなく!
ひとりぐらしをはじめてから、この物体が自宅にあった記憶がないので、久々にお目にかかります。
それは、体重計。
生まれながらにして小太りの私。
「まるい」とか「むちむち」とか「ちんちくりん」とかいう言葉を投げかけられても、「そうですがなにか」としか言えない姿をしています。
思春期のころこそ、やせてみたいとダイエットをしたことがあるような気がしますが、続いた記憶も成功した記憶もありません。
そしてだんだん、わかってきました。
ははーん、あたしゃ、かわらないな。
中2くらいで止まった身長。体重も当時からたいした変化なく。
やせることはありません。でもこれ以上太ることもありません。キープ。小太りキープ。
どうやら、皮膚に対しての容量が、パンパンのようです。
先日、背中をポンと叩かれたときに例えられたものは、「10キロの米」でした。
ダイエットもしませんし、暴飲暴食しても肉づきはかわらないので、体重計に乗りたいと思うこともありません。
たまに銭湯にいったときに測って「ふーん」と思うくらいのこと。
それがなぜ、我が家にやってきたかというと、ただ「魔が差した」のです。
近所の西友をぷらぷらしていたら、ふと体重計が目に留まりました。
シンプルで姿も良く、値もはらず、体重だけでなく、体脂肪率や基礎代謝量や体内年齢などのもろもろが測れると書いてあります。
メーカーは、タニタ。
タニタってなんか聞いたことあるぞ。食堂がなんたらって。タニタなら安心に違いない。うん。なんか体重計って女の家にあるものな気がするし。
体重計に乗らないがゆえの万年小太りなのかもしれない。
体重計に乗れば体重のことが気になり、体重を意識するようになり、体重が減るかもしれない。
体脂肪や内臓脂肪の値が高かったら、筋肉量や基礎代謝量が低かったら、私は意を決して、健康を意識した規則正しい生活を送るようになるかもしれない。
で、ついふらふらとレジに。
きっと疲れてたんでしょうね。帰り道、すでに我に返ってました。
体重計を買ったからと言って、何もしなけりゃやせないことなどわかっておる。規則正しい食生活など、無理である。炭水化物が、好きである。
でもせっかく買ったので、乗ってみることにしました。
どうせ「やや肥満」とか出るんでしょ、でも意外と基礎代謝量があったりして、などと思いながら足をのせてみたら……
体脂肪率「ふつう」、筋肉量「ふつう」、内臓脂肪「ふつう」、基礎代謝「ふつう」。
ふつう。
標準。
M。
そう、私はMの女。
世に出回っているS、M、Lとざっくりサイズをわけられたものは、たいがいMである。
そんなドMの体に丸い顔がでんとのっかり、寸胴で手足が短いもんだから、総じて印象が「こぶとり」なのだ。
そうか、ふつうか。
体内年齢は、実年齢と全く同じでした。
体重計は、私に、喜びも、悲しみも、生活向上へ意欲も、なにも与えてくれませんでした。
かつてないほどに「無」を感じる買い物です。
「ふつう」であることの確認のためだけに、しばらく乗り続けることにします。
会場となっていた「街かどギャラリー」は住宅街のなかにあります。
前の道路は駐車禁止になっていたため、おまわりさん、もとい、警察官の方が自転車に乗って時折パトロールにきていました。
あるとき、警察官の方がふらりとギャラリーにやってきました。
「なにやってるんですか?」
不審な者が不審な展示をしていないか確認に来られたのでしょう。
わたくし山田という者で下の名前はマチと申しましてカクカクシカジカ。
こういうのもあるんですよと、『山田商店街』のなかにある「犬のおまわりさん」というお話をお見せしました。
「犬のおまわりさん」は、山田商店街をパトロールしていた犬のおまわりさんが体の不調を訴えて引退し、商店街のただのペットとなるまでを描いたお話です。
山田町のおまわりさん、爆笑。
それから、全国80万人の山田さんで山田町を応援しようと活動する「山田町応援団」の話になったときに、彼の口から衝撃発言が飛び出しました。
「山田交番にも“山田”がいますよ」
「ええっ。山田町に“山田さん”はほんとんどいないはずでは!?」
「大分県から応援に来ているんです」
「私はまだ山田町で“山田さん”にお会いしたことがないんです。ただ“山田さん”に会いたいというだけの理由で交番に行ってもいいですか?」
「いいっすよ」
さすが山田町、おおらかです。
数日後、山田町役場の近くにある山田交番に向かいました。
「あの〜、山田さんはいらっしゃいますか?」
「私が山田です」
おおっ、若き警察官の「山田さん」!
わたくしも山田と申しましてカクカクシカジカ…希少な山田さんに会えると聞いてやってきた次第です。
山田さん、笑ってます。
山田交番の山田さんは、
「お前は山田だから山田町に行け!」
と指令を受けて山田町に配属されたそうです。
警察も粋なことをしなさる。
「山田交番の山田です、っていうと町の人にすぐに覚えてもらえるからいいですよ〜」
ですよね〜。
山田町では、山田って名前はテッパンですよね〜。
世間話をしていましたら、山田さん、うしろで書類を書き込んでいる人を指差して、
「ちなみにこの人も山田なんですよ」
ええっ!!
「あ、どうも、船越交番の山田です」
船越というのは、山田町の地区の名前です。山田駅のおとなりが船越駅。
「はじめまして、山田です」
「どうもどうも、山田です」
「私だって、山田です」
山田の三つ巴。
船越交番のおまわりさんは、花巻出身の山田さんでした。
「岩手県には“山田”が少ないんですよ。ぼくは今まで、自分以外の山田さんに会ったことがありません」
「へぇ〜」
「山田町の電話帳にもほら、1軒だけしか載ってないんですよ」
「会わないわけですよねぇ」
まさか山田町の山田交番で、一度にふたりの「山田さん」に出会えるとは。
奇跡の山田タイム。
海の近くにあった山田交番は、津波によりなくなってしまいました。
現在は仮設の建物ですが、看板やランプなどは、もともとあったものを拾い出して使っているそうです。
山田交番の山田さんをはじめとする警察官のみなさま、これからも山田町の安全をお守りください!
山田対策も、どうぞよろしくお願いします!
***お知らせ***
9月30日(日)17時〜、東京大田区の居酒屋「きさらぎ」にて、山田町応援団イベント「山田町を食べて応援しよう!」という会を開催します。
山田町直送のお魚や野菜を食べながら山田町について語らおう、という気楽なお食事会です。
山田マチもまいります。
どなたでも参加できますので、ご興味のある方は、yamadanokakimono@yahoo.co.jpまでおたよりくださいませ。
住宅密集地帯にある、一応名前だけは公園と書かれている2坪くらいのスペース。
遊具はひとつもない、殺風景なせまい空き地のなかに立っている、こいつ。
あぁ、なんとムカつく。
ひとをコバカにしおって。
しかも2体。
なぜにこの立ち位置。
こどもにどう遊べと。なごめと。
横を通るたびに膝がくずれ落ちそうになります。
ある日、飲食店のトイレで用を足していたら、なにやら視線をかんじました。
人でもない昆虫でもない・・・
こいつでした。
ドアに取り付けられた、荷物かけ用のフック。
頭のそれはリーゼントか。
重い荷物をぶらさげてやろうか。
ネジをマイナスにしてやろうか。
ひとをコバカにしおってからに。
自宅では布団で寝ています。
朝起きてすぐに目に入るのは、タンスの上に置いてあるこのカバン。
「ガッカリ!」
と言われている気がしてしょうがないこの顔。
あぁ、ムカつく。
この白いトランクは、母の実家の物置でカビだらけになり、捨てられそうになっていたものを私がもらいうけました。カバンのなかはブルーの布が貼られ、マジックで母の本名が書かれています。若かりし頃使っていたそうです。
布団のなかでまどろむ私にカバンはつづけます。
「あーだらしない。まったくいつまで寝てんの。好きなときに食べて飲んで、好きなときに寝て起きて、そんなデタラメな生活をいつまでつづけるつもり。はぁ情けないったらありゃしない」
はいはいデタラメですいませんね。私がわるうございました。
起き抜けにカバンに責め立てられる。
あぁムカつくけどでも、ついつい目がいくこういうやつら。
これからも探してゆこう。
]]>「山田の書きもの展 in 山田町」は無事に終了いたしました。
ご来場くださったみなさま、遠くから応援くださったみなさま、誠にありがとうございました。
それと同時に開催した「山田マチの山田町ツアー」。
こちらもおかげさまで無事に終えることができました。
参加してくださったみなさま、ありがとうございました。
一体どんな方がいらっしゃるのかとドキドキハラハラしながらの募集でした。
しかしながら、
「このブログを読んでくださっている方なら大丈夫だろう」
と、へんな自信を持って呼びかけたのも事実。
すぐに「いきます!」と名乗りをあげてくださったみなさんは、さすがに楽しみじょうずな方ばかり。
山田町で「山田」というものを見つけては「山田だ!」と喜び、山田町役場の前にある山田町掲示板を「本物だ!」と記念撮影。
「山田さん、かわいいものがあるよ」と言うので行ってみると、スーパーの商品棚に「なめたけ」の瓶のフタがずらり。
山田町とは関係ないけど、かわいいねぇ。
山田町とは全然関係ないけど、おふのふーちゃんもかわいいねぇとほのぼの。
そんなかわいいみなさんでした。
意外といえば意外だったのは、女子限定のツアーで、全員がひとりで応募されたこと。
「たぶんここにいるのは、小学校時代、トイレに行くとき友達と手をつないで行かなかった人たちだと思う」
と言ったら、みんな苦笑いしながらうなずいていました。
初対面で職業も年齢もみんなばらばらなのに、妙な一体感がある不思議な一団。
ツアー日程をざっとご紹介しますと。。。
1日目。
朝9時に盛岡駅に集合し、車で一路、山田町へ。
「JR山田線」を右に見たり左に見たりしながら、信号のほとんどない約100キロの道のりをひたすらまっすぐ走ります。
道の駅「区界(くざかい)」や「やまびこ」で休憩をとりながら、お昼には山田町に到着。
釜揚げやさんで茹でたてのうどんをいただきました。
ちくわまでもうまいと盛り上がり、レジにあった「山田生せんべい」をわけっこして食べました。
午後は、山田町在住Kさんの案内による「山田町めぐり」。
私は「山田の書きもの展」の方に行っていたので、この「山田町めぐり」には参加していなかったのですが、帰ってきたみんなに
「どうだった?」
と聞くと、
「亀仙人に会ったよ!」
「亀仙人がね、山田のことをいろいろ教えてくれたの」
「あとはひみつ。ね。」
「うん。ひみつ。ふふふ」
詳細を教えてくれません。
一体何があったのか。。。
夕方、震災後にできた入浴施設「おぐらの湯」でひとっ風呂あびて、居酒屋「初音」さんへ。
Kさんや、航空自衛隊山田分屯基地のみなさんとのお食事。
自宅が全壊しながらも任務にあたった話、震災後すぐに被災地での勤務を希望した話、町の人のためにおにぎりを何時間もにぎりつづけた話など、なかなか聞くことのできない貴重なお話を伺いました。
宿泊は、「嶋田鉱泉」という昔ながらの湯治場へ。
2日目。
朝ご飯を食べて、嶋田鉱泉の名物「熱い風呂」を体験。
私が以前くるぶしまでであきらめ、「調理する気か!」と叫んだ50度近い熱湯風呂。
みんなで体を真っ赤にしました。
宿を出て、スーパー「びはん」や「山田商店街」、最近できたお土産処「五篤丸水産」でお買い物。
それから「鯨と海の科学館」を見学。
現在は休業中なのですが、特別に内部を見せていただきました。
世界最大級のマッコウクジラの等身大模型や、町のみんなでつくった骨格標本を眺めて「おぉ〜」。
お昼は「道の駅やまだ」で。
私が購入した「わかめソフトクリーム」を一口ちょうだいと食べに来た者たちは、無言で私の元を去っていきました。
その後、あっというまに終わる「山田道路」をドライブしたり、「山田八幡宮」をお参りしたりして、夕方、「復興かき小屋」へ。
山田町やおとなり大槌町の若い衆、私の友達のおばちゃんたち、漁師さん、山田町応援団のメンバーら、約20人での宴です。
残念ながら「牡蠣の食べ放題」は季節はずれだったのですが、山田湾をながめながら、海鮮鉄板焼きやお刺身や珍味をいただきました。
お腹いっぱいの一行は山田町に別れを告げて、車でブーンと盛岡へ。
深夜バスの出発地である温泉「開運の湯」でさっぱりし、バスやホテルや自宅、それぞれの場所にお別れとなりました。
みなさん、おつかれさまでした!
……と、楽しげな話ばかりを書いてしまいましたが、実際の山田町は、壮絶です。
津波で流され、火事で焼け尽くされ、建物の基礎だけが延々と続き、集落ごとなくなっている地区もあります。
うどんやさんも居酒屋さんも商店街も、仮設の店舗です。
科学館の壁やガラスは破られ、展示物は壊され、建物のまわりはガレキが山になり、焼けこげた車が積まれています。
山田駅のあった場所には駅も線路も見当たらず、地面に立っているのに、町が360度ぐるりと見渡せます。
でもやっぱりこれは、見てもらうしかないのです。
そこに生きる人々が、どんなふうに語り、嘆き、笑うのか、会ってもらうしかないのです。
楽しいところも、つらいところも、全部ひっくるめて、私が大好きになった「山田町」を見てほしいなぁと企画したツアーでした。
町のみなさんからは「またお友達をたくさん連れてきてね〜!」と言われています。
仮設に暮らすおばちゃんたちと、集会所で「山田ティーパーティー」をしようか、なんて話も。
山田ツーリスト、機会ができたらまた企画したいです。
そのときは、いっしょに遊びにいきましょうね。
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