2011.11.28 Monday 13:10

山田町でのこと。(1)

 

2011年9月、

私は岩手県の山田町にいきました。


山田マチなので、山田町にいきました。


こんな理由でふらりと訪ねた私を、

山田町のみなさんは、笑って歓迎してくださいました。

10月に開催した展覧会「山田の秋の文化祭」で、

山田町の山田マップを発表したり、

記事を書いた冊子を販売したりしたのですが、

まだまだ書き足りないことがあるので、

このブログでも、山田町での出来事を書こうと思います。

どうぞお付き合いくださいませ。


まずは山田町に向かった1日目のことから。。。


・・・・・・・・・・・・・・・・


山田町は、岩手県の沿岸部の真ん中くらいのところにあります。

盛岡から出ている「JR山田線」



…に乗車するのが夢だったのですが、

津波により沿岸部の線路が流され、

山田線で山田町まで辿り着くことは叶わず。

なので盛岡から車を借りて向かうことにしました。


盛岡で宮沢賢治の銅像に挨拶し、冷麺を食べ、さあ出発です。

国道106号線をひたすらまっすぐ行き、

宮古市に入ったら国道45号線に入り、またひたすらまっすぐ、

というシンプルな道のりなので、

方向音痴の私にも余裕のドライブです。

おだやかな山道を気持ちよく走っていると、

左手の緑のなかに線路を発見。

あれは、憧れの山田線じゃないか!

記念に切符だけでも買えばよかったなぁ。

山田線を右に見たり左に見たりしながら、

まっすぐ、まっすぐ約2時間。

45号線に入り30分ほど走ったら、

案内看板が見えてきました。



山田湾だ!


いよいよ山田へ。


山田町を訪れるにあたり、

完全なる方向音痴で地図の読めない山田は、

銀座にある岩手のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」に行き、

山田町の観光地図をもらっていました。

駅、交番、銀行、郵便局、飲食店、民宿、土産物屋などが、

大きな紙に大きな字で、これでもかというほど分かりやすく、

丁寧に書き込まれています。

これさえあれば、と自信満々に山田町に突入した私でしたが、

その地図がまったく意味をなさないことが、

徐々にわかってきました。


ない。ない。ない。なにもない!


国道45号線は、海沿いを走る道です。

その国道沿いに漁協があり、人が住み、町が栄え、

主要な施設やお店は、ほぼすべてそのあたりに集中しています。

それらが、いっさいがっさい、ほとんどなにもない。


山田町は、津波のあと、火事にもみまわれました。

あたり一帯、焼けこげた地面と、

わずかに残るコンクリートの基礎部分が見えているだけ。

骨組みだけ残っている建物もありますが、

もはやそれが何であったのか、分かるすべはありません。

目印にしようとしていた山田交番も山田郵便局も、

見つけられる気がしない。

指折り数えながら進もうと思っていた信号も、ない。


山田パニック!


とにかくどこかに車を停めて、現在地を確認しようと、

国道から、かろうじて道とわかる道に入ってみました。

建物も駐車場も道のさかいも何もないのだから、

どこに車を停めてもいいはずなんだけど、

なんだかはばかられ、私のほかに走る車もない道を、

おそるおそる進みます。


すると、1本のまっくろな木がぽつんと立っている、

広場のようなところに辿り着き、

道はそこで途絶えました。

木から少し離れた、とくにきっかけのない場所に、

おとぎ話のように立つバス停の看板。

そこには「山田駅」と書いてあります。


一度降り立ちたいと願っていた「山田駅」は、

北風さんがふっと息を吹きかけたかのように、

消えてなくなっていました。


車を降りました。

360度、ぐるりと、眺めます。

どこの角度からも、遠くの方まで、見渡せます。

空も、山も、地面も。

地図によると、駅にはショッピングセンターがあり、

私が通ってきた道は商店街だったようです。


なくなってしまったんだなぁ。

山田布団店があったかもしれない。

山田クリーニング店があったかもしれない。

喫茶山田があったかもしれない。

山田写真館、山田寿司、山田ベーカリー、

バーバー山田、テーラー山田、スナック山田…

いろんな山田が、あったかもしれない。

津波は、みんなをどこに連れていってしまったんだろう。


バス停の時刻表をみてみました。



パーフェクトでした。


再び45号線に戻り、走り進みます。

「道の駅やまだ」をすぎて少し走ると、

本日から宿泊する「乙女荘」が見えてきました。

山田町は宿泊施設が流されて、

わずかに残る宿は工事の人でいっぱいだ、

と噂に聞き、車中泊や寝袋を覚悟していたのに、

ダメもとで電話したら「あいてますよ〜」とあっさり決まった宿。

しかも「乙女荘」なんていうかわいい名前。うれしい。


いざ駐車場に入ろうとしたら、

入り口のところに紫色の大きなワゴン車が、でーん。

なんじゃこれは。

ワゴン車の一面には、的場浩司の顔が、どーん。

乙女と真逆の顔面が、それは見事にペイントされています。

その横をなんとかすりぬけ、車を停めて玄関にいくと、

笑顔で出迎えてくれたのは、元80年代アイドルのような、

かわいらしい奥さま。

ほっ。乙女だ〜。

2階に案内されると、今度は廊下に青いモンスターが、ずーん。

私がまるごと飲み込まれてしまいそうなほど巨大な、

ひとつ目玉のモンスターのぬいぐるみのおでましです。

再び逆乙女。

一体どうなりたいのだ乙女荘よ。


口をあけて笑うモンスターを横目でみながら部屋に入りました。

こざっぱりと清潔な、風通しの良い6畳間。

今日は私以外に宿泊者はいません。

荷物を置き、畳にぺたりと座りました。


山田町に来たんだなぁ。


しばらく動けなくなりました。


長旅の疲れではなく、

ドアの向こう側にいる青いオバケがこわいからでもなく、

今見てきた光景を、山田町の現実を、

私なりに消化するのに、少し時間が必要だったのです。


人口2万人の山田町、

地震による津波と数日間続いた火災により、

中心部は壊滅状態、

家屋の倒壊3000戸以上、

死者行方不明者は800人を越える…

これまで情報として知っていた数字が、

実感となってせまります。


つづく。

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