こっちは女三姉妹、むこうは男三兄弟、末っ子どうしの結婚式。
挙式を無事終えて、とうとう最後の一日となりました。
飛行機の出発する夜までは、自由行動です。
旅の計画中、旅行会社から送られてきたパンフレットに、
10歳の甥の心をとらえて離さない1ページがありました。
それは「キャメルサファリ」。
らくだに乗って海辺を散歩する、というオプショナルツアーです。
甥の母である真ん中の妹から、
一緒に行ってやってくれないかと打診されたときは、
「どうしても、是が非でも、彼がらくだに乗りたくて、
一緒に行く大人がどこをどう探してもひとりもいなかったら、
すごくやだけど行ってもいいよ」
と回答しました。
やですよ。
灼熱の海岸でらくだに乗るなんて。
エジプトの砂漠で移動手段としてらくだを使う、というのなら、おおいに体験してみたいと思う。
月の砂漠なら歩いてみたいと思う。
でも、どこぞのホテルまで車でわざわざ行って、ちょっとそのへん歩いて同じ場所に戻ってくるだけなんて。
やですよ。
森の木陰で文庫本でも読んでいたいですよ。
しかし、私のらくだに対するモチベーションは全く伝わっていなかったようで、
気づいたらキャメルサファリに申し込まれていました。
参加者は、私、甥、ふたりの妹、妹の友達4人の計8名。
大人いるじゃん!
私いらないじゃん!
その叫びも時すでに遅し、もうキャンセルはできないとのこと。
正午近くの最も気温の高い時間帯、
気温30度をゆうに越える、太陽の光をさえぎるものが何もない海岸で、
私は、らくだの背中に揺られていました。
暑い。
熱い。
汗が大量にふきだします。
ガイドがにこやかにカメラを向けてきますが、笑顔で応えることができません。
なぜなら私のらくだは、どうしてか私のらくだだけは、
背中が横に傾き、強烈なGがかかっているのです。
足をふんばり、ロープをしっかり持っていなくては、転げ落ちてしまうのです。
6匹のらくだが、地元民も観光客も誰もいない海岸を歩いていきます。
なぜ誰もいないかというと、暑すぎて、そんなところにいられないからです。
レスキュー隊らしき地元の青年たちが、木陰で釣った魚を焼きながら、私たちを指差して笑っています。
高い金払って、バリ島とは何の関係もないらくだにのって、この暑いさなか。
正気の沙汰とは思えないのでしょう。
私もそう思うよ、お兄さん。
少年野球で灼熱慣れしている甥は、元気にはしゃいでいます。
妹やその友達らも、キャーキャー言い合い記念撮影とかしています。
汗だくで手足のしびれてきた私を見て、ぎゃははと笑い、
「ねえちゃ〜ん、がんばってー!」と声援を送ってきます。
らくだに乗る意義をとうとう最後まで見いだせなかった私は、
ツアー後、妹たちに問いました。
「どうしてみんなでらくだに乗ろうと思ったの?」
返ってきた答えは、
「思い出づくり!」
そうか、思い出か。
たしかに、思い出だね。
みんなで一緒にらくだに乗ったね。
でもね、お姉ちゃんは、暑さにも汗にも動物にも弱いんだよ。
旅はのんびりしたいんだよ。
アクティビティは欲してないんだよ。
なるべく刺激のないように静かに生きていきたいんだよ。
らくだに罪はありません。
もちろんバリ島にも。
思い出は、つくろうとしていなかった場所にも、ごろごろ転がっています。
バリ島の空港に着くなり
「あつい。もういやだ。二度とこない」
とぼやいていた新郎のおかあさん。
帰るときには、
「楽しかったー!」とにっこにこでした。
おかあさん、
同感です。
バリ島のはなし、おわります。
↓自分のカメラで唯一撮った写真。
炊飯器!多い!かわいい!
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